文献综述： １、三好行雄：『芥川龍之介論』（昭51#12539;9筑摩書房)刊 三好行雄の『芥川龍之介論』は、芥川に関心をもつ者のみならず、著者の近頃の発言から察せられる極めて研究態度に意識的な姿勢から、作品論と作家論のありよう、批評 と 研究、或いは研究者の文体に関する問題を自と提出しているに違いない点で、丈 学研究に携わる者一般が待望し、注目した書であろう。

目次は、1と2に分かれるが、1 が核とな石割透るもので、著者が〈あとがき〉に書くように「最初期の『大川の』水から遺稿にいたるまで、その間の主要な作品を個々 に論じながら、芥川文学の系譜を時間に即して追うという形をと」り、2は 「工の各 論、あるいは余論としての性格」が強い 。

２、周明明《「蜃気楼」の風景－生と死の境界を歩くー》大東文化大学日本文学会第31号1992年 この論文によると、具体的にいえば、著者は＜蜃気楼＞を通し、芥川龍之介の心境変化を分析する文章である。

「蜃気楼」の解読に対し、研究や理解も必要である。

まず、”初稿原題の「海の秋」を「蜃気楼」と改題した作者の意図はそもそも何であったのか。

”という疑問を投げてくる。

そして、原文をむすびつけ、いちいちと分析する。

最後に、”芥川は、当時自分の心理の中で抑圧され、孤立させられ、そのために負担となっていたところのものーーもちろん言葉と意味との即自的な関係という状況のもとでは芥川にとって誰にもいうことが不可能な世界ーーに、いわば「詩的精神」と芸術的はけ口を見付け、そこにいささかの安らぎと浄化を得たのかもしれない。

”という結論が得られる。

３、千田實 《芥川龍之介『鼻』における考察―近代文学に現れた古典の世界》 『鼻』は，第四次「新思潮」の創刊号（大正5 年2 月15 日発行） に発表された。