『地獄変』の中国語訳本の比較――固有名詞を中心に 《地狱变》的中译本比较——以专有名词为中心文献综述
2020-07-01 20:53:31
「地獄変」は大正七年五月一日から二十二日まで二十回わたって「大阪毎日新聞」(夕刊)に連載されて、小作人の語り手の視点から、主人公の良秀と権力者の大殿様との対立を軸とし、娘の死を見た良秀の悲しみから輝きへの変化を頂点として描いたものである。
芥川龍之介の「王朝物」の代表として、従来高く評価さている。
日本では、小島政二郎(大正七年)は「地獄変」が発表した直後に、『三田文学』で、芥川の「説明癖」のため読者が興ざめし、「小説がお話になる」「本当が嘘になる」と批判もあるものの、「良い方はいくら褒めても褒めたりない」のであり、「地獄変」を「芥川でなければかけない」作品とし、その「詩人的資質」を絶賛している。
それに、中国でも「地獄変」の研究に関して、劉艶萍(1996)は『天津外国語学院学報』で、「①芥川の歴史小説の特殊性:ただの歴史的な再現だけではなく、王朝の説話物語の材料の近代的解釈を試みることで、彼自身の持っている主題を生かしたものである。
②芥川が書かれた「」地獄変」の内容:世俗の権力者大殿と本朝第一の絵師良秀との悲壮的な対立を、大殿に二十年来仕えている従者の言葉を借りて展開されている。
③作品に現れている作者の芸術至上主義:目の前で、最愛の娘を焼き殺すという犠牲をはらって、自己の芸術を完成した絵師良秀の姿は、芸術を人生の最高のものと考える芸術至上主義者といえよう。
作者は絵師良秀を通した、自分自身の芸術至上主義を語るものである。
④主人公良秀の自殺:現実に対する芸術の勝利であり、「地獄変相図」の真の完成を意味している。
⑤距離感を持たせた語り手の設定:作者は自分自身を傍観者の位置において、事件と作者の間に、ある距離感が生じて、そのために良秀の鮮烈な生き方に対する作者の主観の直接の表白は隠されている。
」と述べている。
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