文 献 综 述 1．島崎藤村（1906）「破戒」新潮文庫 　「破戒」という作品が日本自然主義文学の先陣を切ったと呼ばれる小説である。

被差別部落に生まれたた主人公#12539;瀬川丑松が生まれたから父より自分の身分を隠してこの世に生きよという戒めを受けて育てられた。

しかし、丑松は罵られている部落民の不幸を憐んだり、道理のない非人扱いに憤ったりして、つい同じく被差別部落に生まれた解放運動家、猪子蓮太郎を慕うようになる。

最後まで父の戒めを破った、部落民という身分を打ち明けた。

日本の部落解放運動に大きな影響を与えた作品である。

2．野口道彦.『部落問題のパラダイム転換』．明石書店. 2000 　著者は現代社会において部落問題を考えてきた。

「部落民」概念の再構築を提言し、またその提言の根拠として「部落の現実の変化」を提示し、「差別意識の変化と解放の戦略」を説くという構成になっている。

現在においては、差別が恣意的に、根拠なしになされている現実のもとで、それらに対抗するための新しい主体の形成を期待するためにも、部落民概念の拡大が必要だというのである。

著者は、同和地区への転入#12539;転出の統計や、同和地区人口の収入別#12539;就労形態別あるいは住居形態別の統計を駆使して、部落の状況の大きな変化を立証する。

また、「無作為に選ばれた市民」を対象とするアンケートの結果を、差別に対する「八方美人型」「差別同調型」「反差別型」「アノミー型」に分類して、フォーマルな社会規範とインフォーマルな集団規範との関係を中心に、「差別の正当化のメカニズム」を丁寧に分析している。